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香について 線香・抹香・焼香・塗香・香炉 ①

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2026.03.28

 以前に一度「なぜ線香を焚くのか?」を少しだけ解説しましたが、今回はあらためて「香」について解説します。


1. 仏教における「線香」の意味
 燈明の解説時にも紹介しましたが、真言宗の供養の基本である「六種供養」のなかに「香」に関するものが二つ出てきます。「塗香(ずこう)」と「焼香(しょうこう)」です。禅宗などの「十種供養」では、さらに「抹香(まっこう)」が加わります。仏教伝来以前に薫香はなかったものの、香りの強い植物(樒、蓬など)や乾燥木(杉、アスナロなど)を燃やして祈祷などの宗教儀礼に用いていたようです。しかしながら「供香」の概念は仏教がもたらしたことに間違いありません。香の文化は四大文明と言われるエジプト、メソポタミア、インダス、黄河のそれぞれに起源があるとされていますが、現在使用されている線香の源流は古代インドの宗教(バラモン教=ヒンドゥー教)から始まったと言われています。南方の暑さの中での強い体臭のために、神聖な宗教儀式をおこなう前に香水(こうずい=香のかおりを付けた水)を体に塗って身を浄めるために利用しました。仏教にも自然に取り入れられインドから中国を経て日本にもたらされます。当時はもちろん線香はありませんので塗香と抹香ですが、平安時代にはすでに練り香(丸香)があったようです。線香が中国でいつごろから作られたのかは分かりませんが、日本には1668年に中国から渡来帰化した人物が長崎で作り始めたとされています。また同じ頃に朝鮮から別のルートで堺に製法が伝えられたとも言われています。堺市は今でも線香の一大産地として有名です。


●塗香(ずこう)
 一般の方にはあまり知られておらず、使用する方もほとんどありませんが、僧侶は仏前に座る前に粉末状にされた香を両手に塗ります。写経前の作法にも塗香は含まれており、写経をなさる方はご存知のことと思います。この香は焚くためのものではなく、細かく微塵(パウダー状)に加工されており、すぐに手肌に馴染んで良い香りが長く持続します。和装時に懐にしのばせる匂い袋の中身はほとんどがこの塗香です。香の起源で解説の通り、最初は自分自身を清める清涼(しょうりょう)の徳のためでしたが、供香(くこう)の言葉通り仏様のお身体に良い香りを塗って差し上げることを意味します。塗香は六波羅蜜の持戒を表します。「真言宗の事作法」には「香を体に塗って身を浄めた私たちは、世の中の色々な決まり事を守り、心の汚れを浄めますと決心すると同時に、仏様の貴い恵みが通っているこの身を粗末にすることなく、仏様が示されるとおりに生活をし、身を清浄に守り、慎み深い敬虔な態度でこの身をたもって生きていきますと誓うのが持戒です。」と解説されています。神社と同じように寺院においても手水場が設けられているために、手や口中を浄水で浄めるほうが簡単で一般的ですが、仏前に行く前に塗香で身を浄めてお参りされると一層良かろうと思います。浅草の浅草寺の本堂前などで大きな香炉に沢山の線香が供えられモクモクと煙が出ているところで、手であおいでその煙を頭から浴びている光景をよく見られると思いますが、「頭が良くなれ」とか「病気が治るように」などと現世利益のための行為ではありません。意味合い的には浄身であるため塗香と同じことを行っているのです。


●焼香(しょうこう)・抹香(まっこう)
 焼香用に香木を顆粒状に細かく砕いたものを抹香と呼ばれることがあります。皆さんが葬儀の参列した際に焼香時につまんで炭のうえにパラパラと振りかけて燃やす香のことです。しかしながら焼香用の香と抹香は違うものです。本来の抹香は顆粒状ではなく、塗香と同じように微塵(パウダー状)です。同じパウダー状でも塗香は火を付けませんが、抹香は火をつけて香りを出します。極端なことを言えば、この抹香を糊で固めて棒状にしたものが線香です。線香が考案される前はすべて抹香が使用されていました。香炉の灰に細い溝を作り、そこに抹香を盛ります。現在でも僧侶は抹香を使用する機会は多く、法会や祈祷の長さによって横一文字に盛ったり、コの字型に盛ったりします。六種供養の焼香とはこの抹香や線香を指しています。そして六波羅蜜では仏道に精進する決心を表すとされています。香は端に一度点火すると、一定の速度で最後まで燃焼し香りを薫じ続けます。「真言宗の事作法」には「私達も一度精進努力しようと決心したならば、それが成就するまで、たゆまず努力と向上の心を継続させていかなければなりません。(中略)また香煙によって好ましからぬ臭気が除かれますが、それはあたかも精進努力の前には、総ての妨げとなる不吉不祥の事柄もたちまち消滅してしまうようなものであります。」と解説されています。また「食香(じきこう)」と呼ばれ、仏様は薫じられた香煙を召し上がって永遠の命を保っておられるとの考え方から香煙を絶やしてはならぬとされています。枕飾りには一本線香を立てますが、これは故人が一直線に迷うことなく仏の世界に進むことを願うからとされ、やはり絶やしてはならぬと言われる所以です。

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